経営助言実例1

えっ!そんな馬鹿な…売上が下がったのに資金繰りが楽だなんて?

M社長は5年前先代の父親が他界して後を引きついだ。会社は年商17億の立派な衣料関係製造販売業であったが、借入が3億、手形割引が1億の借入債務4億が大きくのしかかっていた。引き継いだM社長は、この借入の額に愕然とした。「これから、一生かけてこの借入を返済していくのか」・・・と。

長年営業畑を経験してきたM社長は、この返済をすべく、猛烈な頑張りを始めた。受注拡大に奔走し、設備投資もした。その結果、年商は過去最高の20億を突破し、利益も1億を記録した。しかしながら、借入はなんと3億2千万に手形割引も1億1千万と計3千万も増えてしまった。原因がわからないまま、M社長は「今年の頑張りではまだまだ不十分だ。来期はもっと頑張って売上を25億ぐらい目指してやる!」

ところが、業績は一転し大変な悪化傾向を始める。M社長が顧客周りをした実感では、売上が3割近くダウンしそうな状況であった。「これは大変なことになる」そう感じたM社長は、私共に今後の資金繰りについて打合せを求めた。

M社長と検討を重ねた結果、私共はこう切り出した。
「M社長、売上3割ダウンはもう覚悟したとして、粗利率は2%ぐらい上げられませんか?」
M社長いわく「今はムリして売上拡大してきた結果の粗利率だから、商品構成を吟味すれば、2%どころか3%は改善できるよ」
「そうですか?では、M社長、何の心配もいりません。むしろ資金繰りは楽になるでしょう。大船に乗ったつもりでドンとかまえて、粗利率にはよく注意して販売してください」
「何だって!そんなわけないだろう。売上が3割もダウンしたら、会社は生き死に関わる事態のはずだ」社長は言葉を荒げて、私共に食って掛かった。

私共が丁寧に、論理的に説明すると、M社長は愕然としてしまった。
「俺の今までの努力は何だったんだ。売上が下がった方が資金繰りが楽になるなんて・・・」M社長は、頭でわかっても信じることはできなかった。

私共のアドバイスは以下の通りである。

この会社は、手形などで平均4ヵ月の回収サイトであったため、約6.5億の売上債権を保有していた。在庫約1.3億。それに対して、仕入業者への買掛金は、2ヵ月後に支払っていたから、常に2.5億あった。すなわち現金化されていない(売掛6.5億+在庫1.3億)とまだ支払っていない(買掛2.5億)の差額5.3億が必要な運転資金として足らなくなる。その一部が借入または手形割引になっているのだ。

売上が3割下がるのであれば、運転資金としての売掛も在庫も買掛も3割減るだろう。すると5.3億×3割の約1.6億が浮いてくる。売上が下がれば当然利益も減る。粗利率が2%上昇できたとしても、試算すると9千万ダウンの1千万まで下がることがわかった。しかし、運転資金減少額1.6億ー利益減少額9千万の7千万が余剰資金として生み出されるのである。それだけではない。利益1億では納税も4千万近くになる。1千万の利益では400万程度だ。差額3千600万も捻出される。したがって、相当の返済資金が生まれるのだ。

私共は何度とこの理屈を説明した。しかし、M社長は「売上が下がった方が資金繰りが楽になる」ということが頭では理解できても、どうしても信じられなかった。資金繰りを改善すべく、これまで懸命に売上拡大に努力してきたのだから無理もない。


そして半年後、社長は「○○さん(私共の担当者)。あの時の話は本当だった。今は資金繰りが以前と比べてずっと楽だ。あの時にアドバイスをいただかなかったら、私は更に売上拡大に努力していたでしょう。粗利率ももっと下がったかもしれない。結果として、今とは全く逆の資金繰りになって、大変なことになっていただろうと思う。本当にありがとう」と言ってくれた。


会計事務所の社員として、これほど嬉しい言葉はない。5年経った現在、この会社は、無借金経営である。

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